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東京高等裁判所 昭和60年(ラ)402号 決定 1985年8月14日

抗告人(債権者) 新日曹化工株式会社

右代表者代表取締役 折田道夫

右代理人弁護士 大橋正爾

相手方(債務者) 破産者双葉トレーディング株式会社 破産管財人 大下慶郎

第三債務者 太田モールド株式会社

右代表者取締役 太田弘

主文

1  原決定を取り消す。

2  抗告人(債権者)の申立てにより別紙請求債権目録記載の請求債権の弁済に充てるため、別紙担保権目録記載の先取特権(物上代位)に基づき、相手方(債務者)が第三債務者に対して有する別紙差押債権目録記載の債権を差し押える。

3  相手方(債務者)は、前項により差し押さえられた債権について、取立てその他の処分をしてはならない。

4  第三債務者は、第二項により差し押さえられた債権について相手方(債務者)に対し弁済をしてはならない。

5  抗告人(債権者)の申立てにより、支払に代えて券面額で第二項により差し押さえられた債権を抗告人(債権者)に転付する。

理由

一  本件抗告の趣旨は、主文と同旨の決定を求めるというものであり、その理由は別紙記載のとおりである。

二  抗告人提出に係る相手方作成の注文書、納品書、請求書、抗告人作成の出荷御案内、送状、第三債務者作成の証明書、物品受取書、上申書等を合わせると、相手方は、昭和五九年一〇月一五日抗告人に対し別紙担保権目録記載(1)及び(3)の商品を発注し、抗告人は(1)につき昭和六〇年二月一日、(3)につき同月一六日これを出荷し、相手方の指示に従い直接第三債務者に引き渡したこと、相手方は昭和五九年一一月五日抗告人に対し同目録記載(2)の商品を発注し、抗告人は昭和六〇年二月五日これを出荷し、相手方の指示に従い直接第三債務者に引き渡したこと、抗告人の相手方に対する右各商品(以下「本件商品」という。)の売買代金額は抗告人主張の同目録記載のとおりであり、相手方は本件商品をそれぞれ第三債務者に別紙差押債権目録記載の代金額で転売したものであること、第三債務者は相手方に対し右代金の支払をしていないことが認められる。注文書の作成日とその後の商品納入日との間に月日の隔たりがあることはなんら不自然ではないし、注文書記載の商品の数量と出荷御案内及び送状等記載の本件商品の数量の不一致は、当初一括して発注された後に逐次当該商品が納入されたためであって、本件商品は注文書記載の商品の数量の一部であることが明らかである。また、これら一連の取引が仮装であることをうかがわしめることもできない。

右の事実によれば、本件商品は抗告人主張のとおり抗告人から相手方に販売されその目的物は直接転売先である第三債務者に引き渡されたものというべきであり、抗告人提出に係る前掲各文書が抗告人主張の先取特権の存在を証する文書に該当することは、明らかである。

三  したがって、本件債権差押・転付命令の申立ては正当として認容すべきであり、抗告人提出に係る文書をもっては本件先取特権の存在を証明するに足りないとし、抗告人の申立てを却下した原決定は失当である。よって、本件抗告は理由があるから、原決定を取り消し、抗告人の申立てを認容することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 吉野衛 裁判官 時岡泰 山﨑健二)

<以下省略>

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